日本国内の訪問美容の動向と歴史的背景を見る

日本は、人口減少のもとで、高齢化がどう進むのでしょうか。2017年のベストセラー本「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」(河合雅史氏著)によると、東京五輪の開かれる2020年に女性の半数が50歳を超えます。2024年には国民の3人に1人、3677万人が65歳以上になります。

そうした事態は突如として起きるわけではないのです。そして2042年に高齢者の数は4000万人近くになりピークを迎えるとされています。2024年は団塊の世代(1947年〜1949年生まれ)が75歳以上に、2042年は、団塊ジュニア世代(1971年〜1974年生まれ)がすべて65歳を超えるのです。

「人生百歳時代」ですから、こうした人たちは、まだまだ元気、とはいえ、年々、外出が困難になる人たちが増えてくるのはやむを得ません。

「地域完結型生活」の流れ

国の思惑通り行くかどうかは別として、この地域完結型生活は否応なくやってきます。その時に、間違いなく「美容師さんにも来てほしい」という需要は出てきます。既にコンビニやスーパーマッケット業界では、自宅訪問や個別サービスという「ラストワンマイル」事業が始まっています。同じように、美容師業界も、より地域に密着したサロンになっていかねば生きていけない時代になりつつあります。それが訪問美容なのです。

訪問美容の歴史は江戸時代にまでさかのぼる

江戸時代には男性の「廻り髪結い」(まわりかみゆい)、大正時代には女性の「出髪」(でかみ)がいて、第二次大戦が終わるまでは、法律規制もなく出張理美容サービスは普通におこなわれていました。

戦後、流れが変わったのは、経済復興のさなかだったため安定した収入が期待できる職業として無店舗でおこなう「ヤミ」の美容と理容の出張サービスが増えてきたためでした。1951年(昭和26年)に理容師美容師法(今はふたつの法律に分かれています)が改正され「店舗を持たないで出張営業する」ことは「特別な場合」をのぞいて禁止されたのです。